Roseliaと“はじまり”の歌〜Roselia『R』を読み解く〜
バンドリガルパが2018年のオタクコンテンツにおいて非常に重要な位置を占めていることは言を俟たない(超個人的主観)。バンドリガルパ、知らない方のために一応説明すると、5人×5バンドのガールズバンドが二つの高校と地域の商店街を舞台にバンドをしながら高校生活を送るゲームであります。プレイヤーは一応ライブハウスの新人スタッフとして25人のキャラクターと先輩スタッフ1人と交流していくのだが、基本的に空気で、ストーリーはキャラクターの関係性を描くことに特化し、季節ごとのイベントや誕生日イベントもプレイヤーほっといてキャラクター同士で仲良くやっている始末。たった1人の性別不明性格不詳のどこの馬の骨とも分からん新人スタッフなんぞに媚びを売るより仲の良い友人同士でつるむ方が当たり前でありリアルである。いいぞもっとやれ。ちなみに関係性オタクの1人である私は二次創作で彼女らを付き合わせたり泣かせたりしている。邪悪である。
そんな(どんな?)コンテンツであるバンドリガルパ、ゲームのジャンルとしてはリズムゲーであるので、プレイできる曲がたくさんあるのだが……そのどれもがかなり気合の入った作り方をされている。キャラソン的なキャッチーさがありつつ、バンド感も持たせつつ、バンドごとの個性を歌だけでなく曲全体のアレンジからも感じさせる。こだわり抜かれた曲ばかりだ。なんかネットサーフィンしててギターの音が聞こえねえなどとほざいている記事をどこかで見た覚えがあるがお前の耳は飾りか? それか使ってるスピーカーが壊れてるんじゃない?
登場するバンドは5バンドあるのだが、そのどれもが個性的なバンドである。そのうち特にラウドな音で聴く者の耳を捉えて離さないのが、今回ニューシングルをリリースしたRoseliaである(クソ長い前置き終わり)。
今年5月にアルバムをリリースしたばかりのRoseliaが放つ今回のシングルは、いわばRoseliaの“第二章”である。Roseliaは声優でありながら実際に楽器を演奏しライブをしてきた、れっきとした“バンド”であるが、そこでベースと今井リサ役を担当していた遠藤ゆりかさんが先日声優活動を引退してしまい、中島由貴さんがそれを引き継ぐことになった。
そんな彼女らの新曲「R」は、印象的なベースのフレーズから始まる。ベーシストが次に託されたこと、“第二章”の始まり、そんなことを感じさせる一方で、そこで歌われるのは彼女らの永遠──《未来永劫 咲き誇るのよ》──、つまり、メンバーが変わろうが、何が起ころうが、RoseliaはRoseliaなのだ。
カップリングは二曲。「BLACK SHOUT」はRoseliaのファーストシングル表題曲。「Neo-Aspect」はファーストアルバム『Anfang』のリードトラック。どちらもRoseliaというバンドの“はじまり”を語る上で欠かせない曲であり、それをこの“第二章”シングルにリマスターver.として収録するあたりもまた、運営側のこだわりを感じさせる。「Roseliaの“はじまり”を感じろ」と、そういうことだろう。
メンバーがどうのと、リアルの面でのRoseliaにばかり着目してきたが、作品内でのRoseliaについても触れたい。バンドストーリー第一章にて、音楽界の頂点を目指し、湊友希那の(言ってしまえば)ワンマンバンドとして結成されたRoseliaは、やがて固い絆で結ばれるようになっていく。先日公開されたバンドストーリーの第二章では、その結束が解けそうになったところを、メンバー全員がそれぞれの想いを本気でぶつけ合うことで、彼女らは再び分かり合い、認め合い、新たなRoseliaとして生まれ変わった。Roseliaはそのときもう一度“はじまった”のだ。
「BLACK SHOUT」、「Neo-Aspect」はそれぞれ、バンドストーリーの第一章、第二章にリンクする。
つまり、この『R』というシングルに刻まれた“はじまり”は、一枚目のシングル、一枚目のアルバム、といった外側の情報だけでなく、作品の中にある物語・文脈にも沿っているのだ。ゲームをプレイすれば誰でも知ることのできる、揺るがしようのない“物語”がある。
それを踏まえて表題曲「R」を聴くとき、最後の歌詞に我々は涙を禁じ得ない。
《絆の薔薇よ 美しく(華ひらくとき)
私たちのモノガタリが(また始まるの…)》
幾度の困難を乗り越え、“彼女ら”は“物語”を紡いでいく。これはそんな物語の新たな“はじまり”を告げる歌なのだ。
それでは最後に、私の大好きな動画を貼ってお別れとしたい。
Roselia 「Neo Aspect」 MV (Paint Ver)
おわり。