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あの頃ずっと聴いていた、ような

ディスクレビュー

 大学に通い始めて三年にもなると、たまに高校生の頃のことがひどく懐かしくなる。懐かしくなる一方で、あまり思い出さなくなっていることにも気づく。昨日の晩ごはんの味もうまく思い出せないのに(流石に何を食べたかは思い出せる)、数年前のことなんてなおさらだ。覚えている事実と、覚えてない事実。忘れてしまった感覚と、忘れられない感覚。断片的な記憶と突然蘇る感覚に、時々頭を抱えたり、苦笑いしたりして今を生きている。

 昔聴いていた音楽を聴いてその頃のことを思い出すなんてのは、ベタなあるあるだと思う。高三の頃通っていた教室には南向きの大きな窓があって、そこから新幹線の走る高架橋が見えていた。授業についていけないときや退屈なときや考え事をするときは、机に突っ伏すか、よくその高架橋の方を、正確にはその向こうの空を眺めていた。授業中の半分以上はそんな感じだったかもしれない。そりゃ浪人もするわ。それはさておき、その高架橋が見える景色は、心象風景とでも言えばいいのか、高校時代を懐かしむ時にいつもまぶたのウラに浮かぶ景色で、あの頃から好きなフジファブリックなんかを聴くとよく思い出す。夕暮れ、高架橋の薄い灰色のコンクリート、くっきりと陰影のついた雲と、端の方が紫がかったオレンジに染まる空。

 先日そんな風景が再び脳裏によぎった。ナードマグネットを聴いていた時に。 

CRAZY, STUPID, LOVE

CRAZY, STUPID, LOVE

 

  ようやくナードマグネットの名前が出てきました。今回はこのアルバムと自分の話。

 このアルバムを語るのに難しい言葉は要らないように思う。ただシンプルにかっこいいアルバムで、もう数え切れないほど聴いた。しかしあくまで出会ったのは今年だ。ナードマグネットの名前すら今年に入るまで知らなかった。

 なのに、「アフタースクール」を聴きながら高架橋の見える景色を思い出した時、すごく懐かしいような、まるであの頃からずっと好きで聴いているような錯覚に陥ったのだ。忘れてしまいことと忘れたくないことを同時に思い出したときの、胸をかき乱すあの感覚が分かるだろうか。アレに近いものに包まれて、気づけば空気の匂いまで思い出せそうなくらい、今の自分とあの頃の自分が重なった。その瞬間、高校生の自分は確かにナードマグネットを聴いていた。たった一瞬だったけど。こんなことってあるか。あったのだ。

 それ以来このアルバムを、買ってしばらくの間はしゃいでいた時のように、また毎日聴いている。高校時代に戻るあの感覚はそれから音沙汰なしだけど、別にそれをもう一度体験したくて聴いてるわけでもないし。ひたすらにまっすぐで、少し情けなくて、最高にかっこいいロックな音楽で、それだけで十分。ただそこにもう一つ、時々懐かしさも覚えるようになって、ますます好きになってしまった。まだ出会って半年程度なのに、どの曲も(きっと)だいたい歌えるくらいには自分の脳内音楽ライブラリに馴染んでしまって、まったくもって最高だぜ。

 特に好きなのは「C.S.L.」と「アフタースクール」。あと「僕たちの失敗」もお気に入りだし「Mixtape」はもちろんだし「イマジナリーフレンド」もいいし……あああやっぱり全部好き! というわけで最後に「C.S.L.」と「Mixtape」のリンクを貼っておさらば。是非聴いて欲しい。


ナードマグネット 「C.S.L.」 (Official Music Video | Nerd Magnet - C.S.L.)


ナードマグネット 『Mixtape』

 おわり。