つかずはなれず

マイペースなかいわれだいこんを目指します

我々の生きるギャラクシー

 竹宮ゆゆこ新潮文庫nexから本を出していたことを最近知ってどっちも一気に読んだ。 ネタバレをほんのちょっと含む感想文です。
知らない映画のサントラを聴く (新潮文庫nex)
 

  竹宮ゆゆこ節とでも言うべき、実に軽妙で底抜けに明るく、少し古くさいネタを入れてくる感じの文章はここでも健在。独特な例え方もキレキレ。話としては「大切な人の喪失にどう向き合っていくか」という割とシリアスなものだけど、このライトな語り口によって重苦しくならず、あっさり読めてしまう。ライトノベル畑の人はともかく、一般文芸を中心に読む人からしたらこの文章は稚拙に思えるかもしれないけど。よれよれのTシャツに便所サンダルが基本スタイルの無職女性(23)、セーラー服で女装するマッサージ師の男性(23)などなど、キャラクターがいちいち強烈で面白い。恋愛って感じはあんまりしなかった。

 何かにつけて、「失ったこと」をありのままに受け止めることは難しくて、それが大事なモノであればあるほど、それがあった頃のことばかりを考えたり、あるいは身代わりを立てたりするものだろう。俺はそれほどの人を失ったことはまだないけど、果たしてそれが起きた時、あるがままに受け止めることはできるだろうか。そんなことを考えた。

 あと、青春(?)×夏×大事な人の死というシチュエーションに、Base Ball Bearの「PERFECT BLUE」を思い出したのでした。


Base Ball Bear - PERFECT BLUE

 

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

 

  こちらの小説は「竹宮ゆゆこの文章」の匂いがあんまりしなかった。なんというか、どこを読んでいても淀んだ影がちらつくような。ヒロインのキャラクター、いじめ、父からの暴力、色んな要素がどんよりした感じをもたらしてるのでしょう。しかしそのへんを全部「軽い」語りで済ませてしまったら説得力がなくなってしまうよな。ラストの展開は予想だにしないスケールの大きさで、文章も話も竹宮ゆゆこの新境地という感じがした(『ゴールデンタイム』に関しては全部は読んでいないので、そこでこういうことをもうやっていたらごめんなさい)。

 最後はちょっと分かりづらかったというか、そのスケールの大きさをちょっと持て余していた感じがしたけれど、読み返して大筋は納得。主人公が倒れたあと、学校で彼を慕っていた人物のほとんどがぱたりと見えなくなったりと、ちょこちょこ(おや?)という点もあるんだけど、細かいことはいいんだ、つまりは愛なんだ。こう言ってしまうことが一番のネタバレな気がする。誰かにオススメしたいというよりも、読み終えた感覚を大事にしたいしまたいつか読み返したいなと思った小説でした。

  ところで、今表紙をよく見たら英文が小さく書いてあったのだけど、これこそ最大のネタバレだった。やっぱりギャラクシーだった。

 

 人が死んでも、その人を誰かが覚えている限り、その生命の煌めきは消えないのではないか。そして自分の中でその炎を燻らせるか、煌々と輝かせるかは、生きている人次第ではないか。語り口や物語は違えど、この二作で竹宮ゆゆこが書こうとしたことは、実は同じようなことなのかもしれない。

 おわり。


【PV】 藍坊主 『伝言』