2017年10月のこと

 連載というものに憧れている。その月にあったことや考えたことから、あの頃聴いた音楽や最近熱中しているものにまで繋げていくような文章の連載。Twitterのライブ感もとても楽しいのだけど、一方でちょっと立ち止まって一ヶ月を振り返るような文章を書きたいなぁと思った。


 それじゃあやっちゃえ!と書き始めること自体はきっとそんなに難しくないのだけど、それを続けることができるかと言えば別問題である。このブログが完全に不定期更新になっていることからも分かる通り、思い立って行動することは苦手じゃないが大抵同じペースでは続かない。飽きっぽいのかもしれない。

 

 けれど文章を書くこと自体は嫌いじゃないし、思いついたらたったかたっと書いてしまいたいと思う。上手く次の言葉が出ないとすぐそのアイディアを投げ捨てるあたりも堪え性の無さを表しているのだが、それでも気づけばまた文章を書いているのだから、たぶん半分くらいは癖のようなものなんだと思う。
 それについて、最近読んだ恩田陸の『ブラザー・サン シスター・ムーン』という半分くらい自伝的な小説に次のような文章があってすごくしっくりきた。

 

 書くというのは癖だ。やめようにもやめられない、あんまり誉められたものではない、注意されるといっときは直るが、しばらくするとやっぱり出てきてしまう悪癖のようなものだ。

 

 恩田陸じゃないけど、自分の物書き癖もどこかこんなところがある。読み返して下手くそだなぁと思ったり、人に読まれたことをとても恥ずかしく思ったりしても、喉元すぎればなんとやら、気付いたらまた書いてしまっている。そうでなければこんなとりとめもない文章を書かない気がする。喋るのは苦手なくせに不思議な話だ。

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

 

 

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 連載と言えば、音楽雑誌のMUSICAを読むことが多いのだけど、それに毎月載っているディスクレビューを読むのが楽しい。レビューされるアルバムの枚数も多いし、複数人で同じものをレビューしているので色んな聴き方が分かる。そこで特に信頼しているライターがいて、立ち読みで済ませてしまう時もその人のレビューは探して全部読んでいる気がする。


 その人の何が良いって、音楽に対するセンスが近い気がするのだ。レビューしているアルバムも気になっていたり実際に買ったりしたものが多いし、そうなると知らなかったアルバムも聴いてみたいと思える。


 あとべた褒めばかりじゃないのも良い。個人的に褒めてばかりのライターはあんまり信用していないので。毎回最高傑作とか言われてもなぁと思うのと同じ感覚。つまんないものをつまんないと言う人だからこそ、「良かった」の一言が響くものだと私は思う。個人のブログだったら、べた褒めでも(この人はそういうスタンスなんだな)と思うし楽しく読むけど、音楽雑誌みたいなのでそれは(ちょっとな~、ビジネスっぽいな~)と感じてしまう。

 

 (この人のオススメするものだったら特に触れてみたい)と思える人がいるとTwitterなんかも楽しい。感想が違う時も(あ、そんな風にも見えるんだ、なるほど)と素直に受け入れられる。そういう人を常に探しております。あとクロスレビューとかもいつかしてみたい。

 

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 連載とディスクレビューの話をしたついでに個人的な「今月のアルバム」の話もちょっとだけ。今月はミニアルバム含め全部で6枚(6枚も!)買って、どれも外れなしのアルバムだったのだけど、アルバムとしての完成度の高さを特に感じたのはこれ。

20/20(トゥエンティトゥエンティ)

20/20(トゥエンティトゥエンティ)

 

 

 全11曲30分ちょっとのコンパクトさで、ダレることなく心地良い音楽に浸れるナイスなアルバムでした。特に「さよなら!さよなら!」が好きで、ストリングスががっつり取り入れられてるけどそこにいやらしさがないのがすごく素敵。バンドじゃなくソロでやってる分、アルバムを彩る楽器が様々なんですけど、それぞれが仰々しくなく、控えめながらに存在感があるというのが良かったです。

 

 

 さあこれで来月も月末に「今月のアルバム」を書くきっかけが出来た。アルバムを買わなかった月も、その月にたくさん聴いたアルバムを紹介したいなと思ってはいるのだけど、果たしてこれは連載として続いていくのだろうか。乞うご期待……いや期待はしないでおいてください。
 「今年のマイベストアルバム」も考え始めていますが、今年は順位をつけない可能性が高いです。その分それぞれの感想をきちんと書けたら良いんですけど、正直これから卒論で忙しくなる気しかしないのでそれも怪しい。
 来月も書くきっかけが出来たと言ったそばから卒論で忙しくなるとか言ってるけど、ほんとに連載として書く気あるのかなこの人。

 おわり。

田所あずさ『It's my CUE.』

 

 

 今度新譜が出るのでそのおさらいとして。1stは未聴。
 曲順がライブっぽいのが良い。60分超えてて長いし曲数も多いので、最初は途中で飽きがちだったけど、全編通して聴いたときの軽い疲労感を伴った満足感もライブのそれと思うと納得のいくものがある。序盤で盛り上げ、中盤で聴かせ、もう一度ギアをあげてフィニッシュ。アンコールは少しはっちゃけて、最後はみんな笑顔でハッピー、みたいな。「DREAM LINE」と「純真Always」がほとんど同じ曲にしか聴こえてなかったけど、それぞれライブ本編のラスト、アンコールのラストの曲と考えながら聴くとそれにも違和感がなくなる。とはいっても、ヘヴィでシリアスなサウンドが多い中でラストのこの大団円な感じには少し取ってつけたように思えるところもあって、しかしそこが似たようなサウンドで活躍しているLiSAの作品との差異になっているようにも感じる。あとはボーカルの声質の違いか。コチラのほうが線が細め。
 去年聴いた時ほど(もしかして微妙かな)とは思わなくなったけど、実は依然として自分の中での評価が定まらないアルバム。少しずつ良いと思うところが増えているので、評価が定まっていないというのも「これからも聴ける」という一つの軸になるのでは?とか言っておく。


 この点に関して少し関係ない話をすると、これがレンタルだったら多分そんなに聴かないまま、微妙なアルバムと捉えて終わってたかもしれない。そう思うとCDを買って聴くというのはやはり大事というか、自分にとって何度も聴くきっかけになりうるのだなと。ストリーミングなんかもあるけど、やっぱり私は自分が買ったCDを大切に聴きたいなと、再び思うのでした。アルバム買いすぎて追っついてない部分もあるけど……。

 

 ちなみに今作でお気に入りは「Fighter's high」。これも最初は(微妙か……?)と思っていたのに何時の間にかよく聴く曲に。激しい曲だけど勢いだけじゃない、なかなかのスルメ。

 おわり。

挫・人間『もょもと』

 「リア充殺して自分も死ぬ」と毎日のように言っていた奴が、ある日「俺は俺なりに生きることにした」と言い始めた。

 

 何の話だ。

 

 挫・人間のアルバムの話だ。

もょもと

もょもと

 

 
 これまでのアルバムと比べるとその変化はよく分かると思うけど、このアルバムだけでも屈折に屈折を重ねた末のポジティブさというものを感じられるのではないかと思う。


 「チャーハンたべたい」、チープさのあるイントロからまさかがっつりのバンドサウンドが繰り出されるとは。ギターソロがむちゃくちゃ良いと思う。ついさっき岡村靖幸の「だいすき」を初めて聴いたのだけどなんか通ずるものがあった、気がする。


挫・人間「チャーハンたべたい」


 個人的に好きなのは「クズとリンゴ」。夕方五時のアニメのエンディングっぽさがあるメロディがたまらなく良い。その次に「ココ」が置かれているのにもぐっと来てしまう。私の中で「下品なSuchmos」と評判の「おしゃれメロス」はベースラインに濡れる。ていうかベースはどの曲もかっこいいので何周目かには一度そこに注目して聴いてみて欲しい。
 そんで「絶望シネマで臨死」が「チャーハンたべたい」と共にMVを作られているわけだけど、これがネガティブ→ポジティブの反転を強く感じられて、ほんとリード曲に相応しい曲。このアルバムの雰囲気が、すなわち今の挫・人間がぎゅっと凝縮されている。おどろおどろしいイントロ、マシンガンのようなAメロからアニソンにも通じるサビで一気に視界が開けていく。大名曲。


挫・人間「絶望シネマで臨死」

 

 と、掻い摘んで何曲か紹介したけれど、正直どれも甲乙つけがたい。歌詞について深く触れはしなかったが、そっちも良いのでCD買ったら歌詞カード読みながら聴いて欲しい。怒りや恨みつらみや悲しみを抱きしめて素直になった言葉は泣けるし強いのだ。

 バラエティに富んでいて、しかもみんなふつーに良い曲で、これで良いアルバムじゃないわけがない。色んなジャンルがルーツにあるのだろうと思わされるし、そういうのを抜きにしても、躁と鬱をアクロバティックに行き来しつつもキャッチーで良い曲揃い。良い曲良い曲と連呼してるけど、つまりそれだけ良かったんです! それだけ好きなんです!

 というわけでみんな挫・人間の『もょもと』(発音できない)を聴こう。耳の穴かっぽじってでかい音で聴くのがオススメ。

 おわり。